福岡高等裁判所 平成11年(行コ)26号 判決 1999年11月19日
控訴人
南原秀治
右訴訟代理人弁護士
加藤哲夫
被控訴人
小倉税務署長 楠木正秀
右指定代理人
細川二朗
同
鈴木雅利
同
腹巻哲郎
同
山崎元
同
森本凡
同
渡邉博一
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成九年一月二一日付でした控訴人の平成七年分所得税の更正処分を取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要
事案の概要は、原判決一三頁四行目の次に、改行の上、次のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の欄に摘示のとおりであるから、これを引用する。
「また、本件のように、個人企業の経営者が、特殊な関係にある個人企業に対して、自己の資産を提供することは世上頻繁に行われているのであり、このような場合に会社のために地上権を設定した個人に所得税を課すことは、社会の実情に照らしてもそぐわず、所得税法の趣旨を没却するものというべきであるから、この点からも本件地上権設定契約の経済的合理性は否定されるべきではない。」
第三争点に対する判断
当裁判所も、被控訴人がした本件更正処分は相当であると判断するが、その理由は、原判決二四頁六行目の次に、改行の上、次のとおり付加するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」の欄に説示のとおりであるから、これを引用する。
「(4) 控訴人は、本件地上権設定契約のように、個人企業の経営者が同族会社に対して自己の資産を提供することは世上頻繁に行われているのであり、このような場合にまで経済的合理性を否定し、課税するのは社会の実情に合わない旨主張する。
しかしながら、本件地上権設定契約自体が、専ら南原鉄工に一時的な受贈益を計上させるために、地上権者による土地利用という地上権設定の実質がないままされた契約であって、それは純経済人の観点からすれば不合理、不自然な契約であることは前記認定のとおりであり、そのために控訴人が税負担が不当に減少する場合には、これを否認することが税負担の公平の観点からも相当というべきである。そして、経営者がその個人資産をその経営する同族会社に提供するに際して本件地上権設定契約のような不合理、不自然な契約が頻繁に行われていることを認めるに足りる証拠はないが、仮にその様な契約が世上しばしばみられるとしても、そのことをもつて本件地上権設定契約が経済的合理性を欠くとの前記判断を何ら左右するものではなく、控訴人の主張は採用することができない。」
よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、主文のとおり判決する。
(口頭弁論の終結の日 平成一一年一〇月二七日)
(裁判長裁判官 吉原耕平 裁判官 兒島雅昭 裁判官 金光健二)